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Oui! Friends..

As you know, "Pianist/Composer/Surgeon"

新幹線大爆破  

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 奇しくも、高倉健さんの訃報を聞いたのは東京を発した新幹線車中だった。前方の電光掲示板に流れる文字を見たとき、え?嘘?と、思わず自分の目を疑った。すぐにネットのニュースを確認、やはり事実なのか・・と改めてショックを受けた。
 世代的に、任侠映画の全盛期を過ぎた頃からの健さんを見て育ったので、「不器用だけどいい人」というイメージ。前にも書いたけど、「幸せの黄色いハンカチ」以降は、暗い過去がありつつ我慢を重ねて黙々と生きていくといった役柄を演じることが多かった。その背景が辛ければ辛いほど、何も語らない姿に共感を覚えた。そう、誰だって言うに言えないものを抱えてる。でも、それを容易く放り出したりはできない。そんな日本人的なカタルシスを、まるで健さんが全て背負ってくれているようだった。
 ただ、個人的にはアウトローとしての健さんが好きだ。数々の任侠映画もさることながら、社会的に弱い立場から敢えてテロリスト(爆弾犯)的な犯罪者となっていく「新幹線大爆破」は、日本映画の金字塔的作品だと思う。
 形式的にはパニック映画の範疇に入るものだけど、当時の時代背景から考えると犯人側の事情も十分理解できる。悪事に手を染めていることと、元々はいい人的な背景とが微妙なズレをもって交錯し、最終的には追い込まれていく。ラストシーンの悲劇的な美しさは佐藤純彌監督ならではとも言えるし、日本人の夢を乗せた超特急新幹線へ爆弾を仕掛けるといった、特異な犯人の最期を演じられるのは健さんしかいないとも思える。
 今後、自身の生き様が演技に滲み出てくるような俳優はなかなか出てこないかもしれない。でも、映画という媒体の中で健さんは永遠に生き、既に過去のものとなりつつある「義理と人情」の世界を我々に伝え続けてくれるだろう。
 合掌。