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Oui! Friends..

As you know, "Pianist/Composer/Surgeon"

KANO 

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 先週末からISIS/ISILを巡る陰惨な報道が続いている。痛ましい事件が相次ぎ、否が応でも負の感情が湧いてくる。それを言葉にしようとすれば、どういう立場であれ誰かを攻撃するような体裁になってしまう。ここで後藤さんが過去に語った言葉を思い出す。

「目を閉じて、じっと我慢。怒ったら、怒鳴ったら、終わり。それは祈りに近い。憎むは人の業にあらず、裁きは神の領域。そう教えてくれたのはアラブの兄弟たちだった」

 そう、憎むは人の業にあらず。自分の中に渦巻く負のエネルギーを少しでも中和したいと思って映画館に足を運んだ。先週の金曜日、NHKニュースウォッチ9の大越キャスターが紹介していた映画「KANO」を観るために。

映画『KANO 1931海の向こうの甲子園』公式サイト

 第二次世界大戦前、日本統治下にあった台湾で、日本人監督率いる「嘉義農林学校」野球部が甲子園決勝まで勝ち進んだ実話に基づいたもの。チームは日本人、台湾人(漢人)、台湾原住民で構成され、当初は数々の偏見もあったが、最終的に「天下の嘉農」と賞賛されるまでの野球を見せるまでに飛躍する。
 異なる民族が野球というスポーツを通じて協力し合う。その真摯な姿勢が人々の心を変えていく。一種のサクセスストーリーではあるんだけど、その社会的背景を忘れてはならない。プロデューサーのウェイ・ダーション曰く、「嘉農」に興味を持ったのは、台湾原住民セデック族による大規模な抗日暴動「霧社事件」が起きた翌年に、「嘉農」が甲子園で準優勝したことを知ったからだという。しかし、映画そのものは純粋に野球へ取り組む監督と選手をまるでドキュメンタリーのような静謐なタッチで描いていく。台湾南部農村の美しい風景と、市井で懸命に生きる人々とともに。
 ストーリーはだいたいわかっているのに、甲子園決勝戦の場面では思わず涙が出てきた。僕ばかりではなく近くの席からもすすり泣きが聞こえてくる。何が自分の心をそんなに動かしたんだろう?昔、最初に映画「ロッキー」を観たときにも試合終了間際に目頭が熱くなったけど、その時の感情とは違う。結果としての勝ち負けを越えた何か・・・対立しそれを克服しようという西洋的なやり方ではなく、違うもの同士が認め合い共生していくアジア的な感覚・・・
 まだはっきりとした答えは出せてないけど、少なくとも自分の中に巣食っていた負の感情は和らいでいた。岡山では駅前のイオンシネマで上映中、ご興味ある方は是非に。