昨日の訃報から一夜明けて、メディア各社は木村拓也コーチの在りし日の姿を一斉に報道してる。現役時代にはそれほど目立つ存在だったわけでもないのに、これだけ取り上げられるのは、若くしてくも膜下出血で倒れたからだけではないだろう。その素顔を知れば知るほど、こういう野球人が今の世に存在したことに感慨を覚える。
読売巨人軍のウェブサイトに、木村拓也コーチがNPBの新人研修で語った言葉が掲載されている。これを読むと、ユーティリティープレーヤー、スーパーサブと言われるまでに、様々な紆余曲折があったことがわかる。実力者のひしめくプロ野球の世界で、どうやったら生き残っていけるか、そしてその時々の環境が自分にとって歓迎すべきものではなかったとしても、どうしたらその場を乗り切っていけるか。苦闘しながら生き抜いた結果が、ピッチャー以外の全てのポジションをこなし、スイッチヒッターとして4番以外の全ての打順をこなしたということ。
またそういう野球人としての実績だけでなく、その人柄が多くの人に愛されていた。プロ野球全チームの試合で皆が黙祷し、移籍する前のチームからも自然と木村コールが巻き起こる。そんなプレイヤーがかつていただろうか?
不幸にして志半ばで旅立つことにはなったけど、余りあるほどの大きな財産を今の世に残してくれた。素直にありがとうと言いたい。そして、天上から暖かい眼差しで後輩たちを見守っていて欲しい。ご冥福をお祈りします。