僕の得意技、岡山では既に上映が終わってしまった映画の寸評(笑)。すんません〜忙しかったもので。
今年の6月、渋谷オーチャードホールのボズ・スキャッグス・ライブに行ったとき、Bunkamuraを入ってすぐのディスプレイに、ある映画の予告編が流されていた。
『セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター』予告編 - YouTube
何気なく通り過ぎたんだけど、そこに映し出されるいくつかの写真に思わず目を奪われ、立ち止まった。何なんだろう?この写真が放つ圧倒的な表現力は。一体誰なんだ??
その映画は、「神の眼」を持つと言われる写真家:セバスチャン・サルガドの生涯を、巨匠:ヴィム・ベンダースとサルガドの実子ジュリアーノが共同監督して作り上げたドキュメンタリーだった。8月1日から東京を皮切りに順次上映され、岡山では9月下旬から。
映画自体は特にスペクタクルなものではなく、撮影旅行を記録した一部の動画を除き、基本的にはサルガドの写真をスライドショーにし、彼自身がそれについて率直に語るというもの。動きを排し、敢えて静的な画面構成にしたベンダースの目論見に、どんどん引き込まれていく。まあ、そんな表現ができるのもサルガドの写真が多くの物語を含んでいるから。一枚の写真を撮るために気の遠くなるような時間をかけ、被写体の側に徹底的に寄り添う。そのために、被写体に内包されている声なき声が、大きなざわめきとなって彼の写真から聞こえてくるのだろう。
だけど、その報道写真家としてのスタイル故に、ウガンダでの大量虐殺というあまりにも悲惨な状況に直面した時、彼自身も大きな精神的ダメージを被る。そこから彼がどのように癒され再生していくのか、撮影スタイルの変貌や彼のファミリー・ヒストリーも絡めて描かれていく。セバスチャン・サルガドという写真家の生涯を追うドキュメンタリーでもあり、一人の人間が救済されていくストーリ−にもなっている。
印象的だったのは、サルガドの優しい眼差しだ。ファインダー越しではあっても、この眼差しで見つめられると、つい自分を曝け出してしまいそう。でも、もし僕のポートレートを撮影してくれたとしたら、きっと僕の中にあるドロドロしたものではなく、未来への希望みたいなものを描出してくれるんじゃないかな。