時間ができたときに少しずつ読み進めてきたこの本、「小澤征爾さんと音楽について話をする」。小澤征爾と村上春樹の対談集で、カラヤン、レーナード・バーンスタイン、グレン・グールドなどにまつわる思い出や、指揮者がどのようにオーケストラと対峙して音楽を作っていくか、二人のざっくばらんな会話の中に興味深い話題を沢山見つけることができる。
一流の音楽家が自分の全精力を傾注して具現化した、ひとつの完成形としての音楽を味わうのもいいんだけど、作品を完成させるまでのメイキング的な風景を味わえるのもまた乙なもの。それを、マエストロの視点(まさに神がかり的なものなんだけど)から解き明かし、作家がわかりやすい文章で再構築するといった、まさに数奇なコラボレーションだ。
中盤に、二人が「リズム」に関して話をする「文章と音楽との関係」という箇所があり、村上春樹のフィールドに若干小澤征爾が寄ってくる場面はなかなかおもしろい。異種格闘技戦みたいな中で、ちゃんと共感し合ってる部分など。もちろん、僕にも頷けることばかりで。
するすると読み進み、最後は珍しくワーグナーなど聴きながら読了。クラシックも本当に奥が深いし、ジャズに限らず色々な音楽をじっくり味わう時間が欲しくなってくる一冊だ。