今日で東日本大震災から9ヶ月。毎月巡ってくるこの日も、年の瀬ともなると少し違った感じがする。復興に向けてまだまだやるべきことがあり、来年に持ち越す懸案事項も多々ある。単純に「良いお年を」とは言えない状況だけど、人々の努力によって少しずつ前進しているようにも思える。
前向きな復興作業は勿論必要なんだけど、あの日以降の経過を振り返ることも大事。特に、熱しやすく冷めやすい日本人にとっては。悲惨な映像が繰り返し報道され、多くの国民が感情的になった時から比べれば、今どのくらいの人が自分の問題として震災以降の状況を捉えているだろうか。「反原発」「節電」が合言葉であった夏場を過ぎ、寒い冬を越すにはいたしかたないと、暖を取るためにエネルギーを消費し続けている我々を顧みれば。
中公選書で出版された、茂木健一郎と竹内 薫の対談で構成された「3.11以後」は、少し前であれば語るのも難しかった諸問題、とりわけ原発について科学的な論考を重ねている。原発問題を政争の具とするのではなく、その価値や安全性をきっちりと評価した上で、代替エネルギーを考慮すべきだろう。茂木は言う。
漁師がよく使う言葉で「板子一枚下は地獄」というものがあります。これは「船乗りの仕事は危険と隣り合わせだ」ということのたとえですが、この感覚を人間は忘れてはいけないと思うのです。(中略)海だけではなく、私たちが生きている世界はどこもが、「板子一枚下は地獄」です。安全で確実な世界など、どこにもないのです。(中略)安全でも確実でもない世界で、何とか生き延びていく。それが人類の姿です。
そう、何が起こるかわからない自然の脅威に対して、ただ怖い怖いと逃げ惑うばかりではなく、できる限りの対処をしながら我々の祖先は自然と共存してきたのではなかったか。そのために、今こそ我々自身に科学的かつ論理的思考が求められているように思えてならない。