大きな樹の下に来ると、不思議に心が安らぐ。青空の中に幾何学模様を描くような枝ぶり。いったい、これほど地面に根をはり、枝を広げていくのにどれくらいの年月がかかったのだろう?風雪に耐え、ゆっくりゆっくりと成長し、いつしか見上げるほどの大きさとなるまで。
春には緑の葉が芽吹き、夏にはその茂みが日の光から涼やかな影をつくり、秋には燃えるような紅葉が惜しげもなく散り、冬には太い幹と枝だけで寒さをしのぐ。そんな年月を何回も越えて果てしない時を刻んでいく。それに比べれば、人の営みなど小さなものだ。じっくりじっくりと前へ進んで。そして、もうすぐ春が来る。