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Oui! Friends..

As you know, "Pianist/Composer/Surgeon"

村上春樹のスピーチ

 昨晩、ニュース番組で村上春樹のスピーチを見た。滅多にメディアの前に出ることはないのに、賛否渦巻く中でイスラエル入りし、自分の考えを堂々と話していた。
 一夜明けて、スピーチの全貌が徐々に明らかになり、改めてその内容を読むと、感動で胸が震えるような思いがする。

"If there is a hard, high wall and an egg that breaks against it, no matter how right the wall or how wrong the egg, I will stand on the side of the egg.

「たとえばそこに硬くて高い壁があって、一個の卵がそこにぶつかって行くとしたら、たとえ壁がどんなに正しくても、卵がどんなに間違っていたとしても、僕は卵の側に立ちます」

"Why? Because each of us is an egg, a unique soul enclosed in a fragile egg. Each of us is confronting a high wall. The high wall is the system" which forces us to do the things we would not ordinarily see fit to do as individuals. "

「なぜか? 僕ら一人ひとりが一個の卵だからです。壊れやすい殻に入った、唯一無二の魂だからです。僕らはみんな高い壁に立ち向かっています。壁とはつまり、個人としてまっとうとは言いがたい行為を僕らに無理強いしようとするシステムのことです」
こちらのブログより引用)

 国家や組織を「壁」、我々個人を「卵」に喩えて、個人の尊厳を語っている。組織や社会があって、その一員として我々は生きているのではない。まず、個人があり、それぞれが独自性を保つことで、個人の集まりである組織を変革することができる。
 この内容をイスラエル人の前で、それも曖昧な日本語ではなく英語でスピーチしたのだから、相当の覚悟があったのだろう。全文を読むと、もちろんガザ侵攻に対する批判ともとれる内容だが、対立する意見の立場も理解したいという姿勢も読み取れる。
 お互いが壊れやすい卵であるとわかっていれば、あえて卵同士がぶつかり合うこともないはずだ。所詮、ハードボイルドには生きられないのだから。