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As you know, "Pianist/Composer/Surgeon"

村上春樹 in 新幹線

 仙台からの帰りがけ,新幹線の中でたーっぷり時間があったので,久々にじっくり本を読むことができました.長距離列車の中って,何故か本がよく読めるでしょ?最近は新幹線もどんどんスピードアップしてきて,岡山からだと名古屋くらいまでだったらゆっくりできないですよね.
 今でも東北新幹線には「Maxやまびこ」っていう2階建て新幹線がありますけど(これは沢山の旅客を輸送するため),

 以前は東海道・山陽新幹線にも2階建て新幹線の「ひかり」がありました.2階建てになった車両は食堂車とグリーン車で,大阪までの1時間少々でも2階からの眺めのいい食堂車でご飯を食べたり,また東京グリーン切符というお得な切符を奮発して買って,広いグリーン車のシートで東京方面へゆっくり移動したりっていうことができました.
 車窓から流れる風景を見ながら音楽を聴いたり,本を読んだりするのって案外素敵な時間ですよね.僕は特に鉄道マニアっていうわけではないですが,ある程度時間があるときには,長距離列車での移動は好きですね.
 それで車内でまず何を読んだかというと,最近刊行された村上春樹の「走ることについて語るときに僕の語ること」という単行本です.
 
 僕は学生の頃からの村上春樹フリークで,彼の最初の小説「風の歌を聴け」からほとんどの作品を持ってます.「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」という初期3部作,そして『これは100%の恋愛小説です』というコピーでも有名になった大ヒット作の「ノルウェイの森」,翻訳されて海外でも人気の高い「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」などなど,当時は若者のバイブル的な作品でした.
 最近も変わらず長編・短編作品が出版されていますが,忘れてはいけないのがそれ以外の本なんですね.エッセイの文章もかなりおもしろいのですが,そんな中で異色なのは紀行集で,特にローマ・ギリシャに滞在したときのことを綴った「遠い太鼓」は秀逸な作品です.

冒頭の

 ある朝目が覚めて、ふと耳を澄ませると、何処か遠くから太鼓の音が聞こえてきたのだ。ずっと遠くの場所から、ずっと遠くの時間から、その太鼓の音は響いてきた。とても微かに。そしてその音を聞いているうちに、僕はどうしても長い旅に出たくなったのだ。

 
 を読むと,本当に旅に出たくなってきます.今年の7月にギリシャに行ったときに飛行機の機内で改めて読み直してみましたけど,ギリシャを実際にこの目で見てくると余計にふんふんと頷けるところがありましたね.また,くすっと笑ってしまったりね.
 
 今回の「走ることについて語るときに僕の語ること」という作品は,長距離ランナーとしても有名な村上春樹自身が「走る」ことについて語ったもので,ただ「走る」ことのみならず,自身の小説が生み出された背景や,彼にとって「創作」する上で「走る」ことの意味など,親しみやすい文章で書かれています.
 引用したい文章が沢山あるのですが,新刊本でもありここでは差し控えますね.ただ,何もないところから小説という物語を生み出すのは,ただ文学的な才能があればいいというものではなく,フィジカルな力が必要なんだなと改めて思いました.村上春樹作品を読んだことがない人でも,必ず前向きな力が湧いてくる本なので,是非呼んでみてくださいね!