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Oui! Friends..

As you know, "Pianist/Composer/Surgeon"

ビル・エヴァンスの語り

 この週末にツタヤへ寄ってレンタルDVDを見てたら,たまたまひとつのDVDが目にとまりました.「ザ・ユニバーサル・マインド・オブ・ビル・エヴァンス」です.レコード・CDではビル・エヴァンスのピアノ演奏は死ぬほど(!)聞きましたが,実際に彼が喋っている映像はこれまで見たことがありませんでした.スティーブ・アレンのナビゲートにより,ピアニストであり音楽教師でもある彼の実兄ハリーと対話しながらジャズについて語り演奏するという内容です.これはおもしろそうだなと思って早速レンタルしました.

 実際に見てみると,かなりためになりましたね.特にジャズが好きな人,そしてジャズを演奏したいと思っている人には,目から鱗みたいな話が次々に出てきます.彼のリリカルな演奏だけ聞いてると,なんかビル・エヴァンスって寡黙な人っていうイメージがありますけど(これは僕が勝手に思ってるだけかもしれないですけどね),すんごく論理的で熱く語っています.自分の思うジャズとは?そして基礎練習の重要性,ジャズを教えるには?というようなテーマについて,彼が実際にピアノ演奏をして解説してくれるんですね!一応,ピアノ弾きの端くれとしては,彼の指が鍵盤の上で動くアップ像があるだけで涙ものです(ちょっとフェチ入ってますね(笑)).
 そんな中で,彼の思うジャズとは?という冒頭の一節をご紹介しましょう.以下に引用してみます.

 かつてクラシックで行われたプロセス(即興演奏という形態)を復活させたのがジャズだ.ジャズをスタイルと考える人は多いが,私は音楽を作るプロセスだと思っている.1分間の音楽を1分間かけてつくるプロセスだ.クラシックは1分間の音楽を作るのに3ヶ月かかる.違いはそれだけだ.ジャズはその歴史的背景や生まれた場所,アメリカ文化を反映したもので特定の音楽スタイルだと思われがちだ.しかし覚えておかなければならないのは,ジャズは即興性が問われる創造のプロセスであり,ただの音楽スタイルではないことを.ショパンやバッハ,モーツァルトだってそうだ.即興でピアノを弾いていた時,彼らはジャズを演奏していた.それが私のジャズに対する考え方だ.ジャズとは感性が生み出す創造的なプロセスだ.(中略)音楽とは,自然に生まれる音を使って語りかけることなのさ.感性が生み出す独創的な音楽を復活させたこと,それがジャズのすごいところさ.18世紀に消えたクラシックの即興演奏を蘇らせたんだ.

 そうなんだよ!まさにそのとおりなんだよ!と思わず両手を挙げてピースしたくなりました.僕は,他のジャンルの音楽とジャズが異なっている最大のポイントはやはり「即興演奏」だと思ってます.ただ,即興演奏をすれば全てジャズと言えるかと言われると,そうではなくて,「即興性」あるいは「即応性」というものがジャズの本質なのではないかと思ってます.
 このDVDを見ながら今年のOJF6用のパンフレット原稿を考えていて,ふと3年前のフライヤーに書いた文章を思い出しました.タイトルは,ジャズ的な「ライフ」です.今でも同じようなこと考えてるので(進歩がないかも),興味のある方は目を通してみてください.さて今晩は,OJFの実行委員とボランティアの親睦会があるので,その模様はまた明日にでもご報告しましょう!では,また!

 ジャズ的な「ライフ」
 「ジャズ」というのはわかったようなわからないような音楽だ.ジャンルとしては何となくわかるような気もするが,どうもつかみ所がないのだ.クラシックのように譜面に忠実に演奏されるわけでもない.即興演奏という名のもとにスリリングな演奏が繰り広げられるというのだが,いい加減かそうでないかは紙一重のような感じもする.かといって,ポップスやロックのようになじみやすくもない.そんな音楽のフェスティバルなんか何故やるの?って一般的には思われるだろう.
 ただ,世の中には「ジャズ」的なものが実は沢山あるのだ.用意周到に計画したことが,ある突発的な事件で全然別物になってしまったような経験はないだろうか?自分だけなら上手くいったはずなのに,他人とかかわることで無用のトラブルをかかえてしまったり..逆に,予想もしないことが起こって,思いがけないチャンスを手に入れたり..そういう場に直面したら,必ずその場その場で臨機応変に対応しているはずであり,それを音楽に言い換えれば即興演奏ということになる.そして,その即興演奏を中心にすえているのが「ジャズ」なのだ.
 自分のことを話せば,平成13年 5月12日深夜,某ライブハウスMでH氏と偶然出会ったのが,そもそもの始まりだった.岡山でジャズフェスティバルをやらないかと誘われ,翌年の初頭に第一回実行委員会に出席してしまったのが運のつきだった.様々な音楽が街角で出会うというコンセプトで「Music Crossroadってどうですか?」と発言したら,それはいいということになった.後々これが岡山ジャズフェスのキャッチコピーとなったのだが,調子にのって「中銀本店前の広場で野外ライブやりたい」と提案してしまったため,その後野外ライブで演奏まですることになってしまった.
 もともと僕はバンドでピアノを弾いていたしジャズも好きではあったものの,まさかこんなことになるなんて・・という思いがする.自分が強く望んだわけではないのに,即興演奏的に物事がすすんでいるのだ.実行委員会の他のメンバーも同じ気持ちだと思う.何故?今こんなジャズフェスにつきあってるんだろう?って.しかし,こう言わざるを得ない.それが「ジャズ」なんだと.ジャズという音楽の好き嫌いにかかわらず,ジャズ的なものに人は妙に惹かれてしまうのだ.予想もしなかったようなことが起こり,けっして正解を得ることができない,そんなジャズ的な「ライフ」に..