本日、10日後に迫った「おかやま国際音楽祭2012」に来演する予定だった、中国出身のピアニスト：ユンディ・リのコンサート中止が発表された。岡山だけではなく、日本国内で9月22日〜10月21日まで演奏ツアーを行うスケジュールだったが、昨今の尖閣諸島を巡る日中間の政治情勢を受けて、中国政府からの行政指導により来日できなくなったとのこと。
オリンピックもそうだけど、スポーツや芸術に政治的な意思を持ち込むことには賛同できない。立場が違えば意見も異なってくるのは自明のこと。だからこそ、双方の距離を縮めるためには、言葉で粘り強くコミュニケーションをしていくしかない。でも、様々な事情で言葉のやり取りが上手くいかない場合には、何か別の手段が必要だ。それが、スポーツであり芸術なんだと思う。卓越したアスリートやアーティストが持てる力を存分に発揮するのを目の当たりにし、誰しもが否応なく感動してしまうような体験を共有したならば、言葉がなくとも分かり合えるはず。そういう貴重な機会が特定の力によって失われたことに対して率直に憤りを覚える。
たかが音楽イベントの直前キャンセルと言うことなかれ。最近国内各所で批判されている韓流も含めて、身近なエンターテインメントであっても世界情勢とは無縁ではいられない。しかし、表現の場が政治的な制約を受けるのであれば、それはもはや純粋な表現とは言えない。だからこそ、表現する側は勿論のこと、サポートする側の気構えも問われていると思う。政治的立場や信条を超えたところに真の表現は成り立つ。それを最も体現したアーティストに惜しみない拍手を送るサポーターでありたい。
