tetsuyaota.net

the article is randomly updated

Oui! Friends..

As you know, "Pianist/Composer/Surgeon"

豊島美術館


 昨年の瀬戸内国際芸術祭では観に行けなかった豊島美術館へ、わずかな時間を見つけて行ってきた。ここは、建築家ユニットSANAAの活動でも有名な、西沢立衛の設計で、内藤礼の「母型」という作品のみを展示している。最近、どこの美術館でも盛り沢山な展示をしている中で、潔いまでのシンプルさ。そして、直島の地中美術館とともに作品だけではなく建築の持つ力をも体験できる。
 僕はピアノという楽器にずっと関わっているのもあって、メロディーラインよりは音が組み合わさる和声の響きとかサウンド全体の構築美に惹かれる。より空間的な拡がりを持つ音楽を創るのがひとつの理想。建築にもディテールを積み重ねて空間を創造していくという同じような側面があり、そういう意味合いにおいて、SANAA設計のロレックス・ラーニングセンターなど、屋内空間に多彩な空間が潜んでいる作品はすごく興味深い。できればスイスのローザンヌまで行きたいところだけど。
 豊島美術館は、外観は周囲の環境にしっかりと溶けこんでいるものの、中に入ると何とも言えない不思議な空間が拡がる。遠近感があるようでない。強い傾斜を描く壁面に包まれているようで、天井にはぽっかりと開いた空間が。そこで切り取られた空の色が、屋内と繋がる。そして、内藤礼の「母型」は、時間とともに姿を変えていく作品。小さな泉から水の命が生まれ出て、そしてそれがいつのまにか動き出し、別なものと結合したかと思えば、次の瞬間には姿を変えていく。時間の経つのも忘れ、じっとその世界に浸ることができた。この素晴らしい建築とアート作品の中に存在するだけで、自分の中にあるかもしれないわずかな創造力に力を与えてくれるような思いがした。