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Oui! Friends..

As you know, "Pianist/Composer/Surgeon"

80年代から今へ

 16日の「ジャズバトル2007」まで後5日になりましたねー.今回は,OJF6パンフレットに書いた「iMusic Life」という文章にも重なる1980年代の追想と渡辺香津美さんについて書きますね.
 実は,今「Mo'Bop / Kazumi Watanabe New Electric Trio」というCDを聴きながら書いてるんですよ.このMo'Bopシリーズは現在第三作目まで出てます.近年,香津美さんはアコースティックソロギターによる「Guitar Renaissance」(I~IVまで)というシリーズもライフワークにしてます.ただ,今回の「ジャズバトル2007」では,僕がエレクトリックでお願いしますとオファーを出したので,Mo'Bopに近いサウンドになるんじゃないかと思ってます.

 もちろん,香津美さんのアコースティックギターも大好きですよ!また別なコンサートを企画したいなとも思ってるくらいです.だけど,香津美さんが日本の音楽シーンに大きな影響を与えた80年代の雰囲気を継承しているMo'Bop系の音を今回は是非聴いてみたかったんですよね.
 パンフレットに「OKAYAMA MOON」さんが香津美さんヒストリーを詳しく書いておられますから,このブログにはあまり詳しくは書きませんが,坂本龍一さんと競演した「KYLYN」(79年),大ヒット曲「Unicorn」収録の「TO CHI KA」(80年)から始まる活躍は素晴らしいものでした.毎年1枚くらいのペースでアルバムを発表して,そのどれもが魅力にあふれていました.実は,僕もこのころのアルバムをかなり持ってます.ただ,これらのほとんどがレコード(LP)としてなんです・・・

 CD(コンパクトディスク)のソフトとプレイヤーが日本で発表されたのが1982年です.以降,86年を境にCDの売り上げがLPを追い越し,90年に入ってからはほとんどLPは生産されなくなりました.
 そのころジャズ界はというと,マイルス・デイヴィスが71年に「ビッチェス・ブリュー」を発表し70年代はフュージョンジャズの幕開けだったんですね.ジャコ・パストリアスがウェザーリポートに加入したのが76年,70年代後半は,フュージョンの爛熟期といってもいいと思います.同時期に日本でも様々なジャズ・ロック・ポップスの融合(フュージョン)が様々な形で試みられるようになってきました.その中で彗星の如く現れたのが渡辺香津美さんだったんですね.
 個人的に好きなアルバムは「GANESIA」(82年)でした.特に一曲目の「RIBOJ」という曲は変拍子のメロディアスなギターリフから始まるクールな曲で,僕も当時コピーしてバンドで演奏してました.香津美さんはギタリストとしても超絶技巧の持ち主ではありますが,作曲家としても素晴らしいんですよね.奇抜なタイトルとともに,様々なエッセンスが入った曲は今聴いてもまったく古さを感じさせません.

 自分の話をすると,僕は88年に大学を卒業して広島の病院へ研修医として赴任しました.その時にはLPではなく既にCDの時代になっていて,岡山を出発する際に沢山のLPレコードを全部実家に置いていくことにしました.新しくCDプレイヤーを買い,ソフト類はCDとカセットテープのみ広島へ持って行きました.自分の人生の新たな1ページをこれから始めようみたいな気持ちもあったんですね.
 ですけど,すり切れるくらい聴いたLPレコードとともに,結果的に学生時代の思い出も郷里に置いてきたような形になっちゃったんです.そして,ちょうどその頃フュージョンジャズの時代もほぼ終わりを告げようとしていました.マイルス・デイヴィスが91年に亡くなり,ジャズ界の帝王もいなくなりました...
 今回の「ジャズバトル2007」で,けっして昔を懐かしんで香津美さんを聴きたいわけではないんですよ.勿論その後も様々な活動をされているわけですしね.でも,LP, CD, 今はMP3のダウンロードと音楽の流通形態が変わるにつれてリスナーにとっての音楽に対する接し方も変わってきますよね.その中で,その時々の生活状況も相まって,僕のように自分の中にある大切なものをどこかに置いてきたように感じることはないですか?
 二人のジャズマスターの演奏を通じて,古くて新しいもの,そしてけっして古びないもの,どこかにしまってあったけど以前と同じ輝きを持つものなどを再確認し,それとともにジャズマスターが「今」を生きつつ新しい音楽を創り出している姿を目撃できたらなあと思っています.LP, CD, MP3の中に封じ込められた情報としての音楽ではなく,今まさに目前で創りあげられるかけがえのない音楽を通じて...これも,僕が考える今の「iMusic Life」です.